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2021.04.01
労務ニュース

36協定が変わりました①紙での届出

労働者を残業させる場合に、予め届出が必要な「36協定届」。
正式な名称を「時間外労働・休日労働に関する協定」と言い、労働基準法36条に基づく労使協定です。事業主が法定労働時間(1日8時間・1週間で40時間)を超えて労働を命じる場合に、労働基準監督署に届け出ると同時に、労働者への周知が必要です。

この36協定届が2021年4月1日から大きく変わりました。
本記事では、36協定届様式の主な変更点について解説します。

1. 様式が変わりました
2021年4月1日以降は、原則として厚生労働省のホームページからダウンロードできる新様式を使用します。

旧様式も使用できますが、労働者代表の適格性にかかるチェックボックス(後述)の追記が必要になります。確実な内容で提出するためには、素直に新様式を使いましょう。

2. 「押印・署名の廃止」にひっかけあり
新型コロナウイルスの流行を機に、行政手続きの簡素化の観点から押印不要の傾向が進んでいます。「36協定届も押印・署名が廃止となった」というのは話題となりました。
しかし、安易に「押印・署名しなくていいのか!」と判断するのは早いです。
押印・署名なしで進めるには条件があります。

厚生労働省が出した案内の「2021年4月~36協定届が新しくなります」に記載された以下の文言がポイントです。

協定書を兼ねる場合には、労働者代表の署名又は記名・押印などが必要です。

「協定書」という言葉はほとんどの人が耳慣れないと思います。それもそのはず、「協定書(36協定書)」と「協定届(36協定届)」は別物です。実は、「36協定書」という労使協定で合意した内容を「36協定届」の様式に記入して届け出るのが本来の流れ。労使協定とは、使用者と労働者の過半数を代表する者との間で締結する書類で、協定した内容に対して、使用者と労働者代表の双方が、署名・押印するものです。しかし、協定届(36協定届)が協定書を兼ねても良いので、ほとんどの事業主では協定届を作成せず、36協定届の届出のみで済ませているのではないでしょうか。
つまり、「協定書」を作成していない事業主は、今まで通り、押印・署名をして労働基準監督署に届出をしてください。

3. 労働者代表の適格性についてのチェックボックスの新設
労働者代表の適格性について以下の要件を確認するチェックボックスが新設されました。内容は以下の通りです。

☑協定の当事者である労働組合が事業所の全ての労働者の過半数で組織する労働組合である又は上記協定の当事者である労働者の過半数を代表する者が事業場の全ての労働者の過半数を代表する者であること。
労働者代表は、事業場における過半数労働組合または過半数代表者として、非管理監督者から選出されます。管理監督者とは労働基準法第41条第2号に規定された「経営者と一体的な立場にある人」を差すため、一般的な「管理職」とは異なります。

労働者代表は、協定締結する者を明らかにした上で、投票・挙手等の正当な方法で選出します。新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが進んでいる状態で投票・挙手は難しいですから、他の方法としては労働者の話し合い等もあります。

☑上記労働者の過半数を代表する者が、労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でなく、かつ、同法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であつて使用者の意向に基づき選出された者でないこと

使用者が労働者代表を指名することはできません。「テレワーク下でも出社率の高い人に頼んだ」、「休業中で出社がないので、家が一番近い人を代表にした」など、使用者の都合で決めた労働者代表では、協定が無効となってしまうこともあります。

これらの条件を満たした労働者代表であっても、うっかりチェックボックスにチェックを入れ忘れると、「36協定届の形式要件を満たしていない」とされ、労働基準監督署では受理してもらえません。
もし、差し戻しとなり、再提出・受理が前の36協定届の終了より後になってしまうと、前36協定届期限切れから、新36協定届の受理までの期間は「違法残業」の状態となります。

36協定届は余裕を持って作成・提出し、チェックボックスのチェック漏れにはくれぐれも注意してください。

ちなみに、このチェックボックスは36協定届だけでなく、各種助成金書式など労働者代表の署名・押印が必要であった書類には追加がみられますので、担当者の方は確認してみてください。

この記事では、紙による届出の解説をしました。
次の記事では、36協定届の電子申請における変更点を解説します。

社会保険労務士法人リンケージゲートでは、36協定をはじめとした各種協定書の作成や電子申請の代行も行っております。
相談業務も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。